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待つ

 これまで聞いてきた落語の中で最高傑作は?もしそう問われたら、私には迷わず挙げる一席があります。学生の頃FMラジオで聞いた古今亭志ん朝の「抜け雀」です。志ん朝のそれは、入手できる音源がいくつかあり、いずれも名演なのですが、どうしてもラジオで聞いたものに及ばないのです。今の人気落語家たちのも聞きましたが比較にさえなりません。一回きりのラジオ放送で二度と聞けないのが残念ではありますが、それこそが話芸の持つ魅力なのかも知れません。

 さて「抜け雀」は、一文無しの侍を泊めてしまった宿屋の主夫婦のドタバタを描いた滑稽話です。一文無しの上に毎日大酒をくらってまったく悪びれない侍と何度も同じ失敗を繰り返す主人のやりとりが最高におかしい。志ん朝の造形したこの二人に勝るコンビはありません。

 絵師である侍は、宿銭のかたに衝立に絵を描かせろと主人に迫ります。主人は、それは前に泊まった一文無しの経師屋が宿銭のかたに作った物だからだめだ、白いままだから売れる、と断るのですが、ついには脅しに屈して絵を描かせることになります。そこから劇的な展開があるのですが、興味を持たれた方はぜひお聞きになってみてください。

 来年1月14日の活活寄席ゲスト真打ちの里みちこさんが講演で鳥取に来られたので、お願いして奥出雲に寄り道してもらいました。実は、もう10年以上前のことですが、里さん奥出雲町内のM小学校に3年生として通っていたことがあります。9才の子どもとしてではありません。58才でした。赤いランドセル背負ってお勉強に通ったのです。その時、里さんの里親を買って出られたのが高橋夫妻でした。写真は高橋家の襖。里さんが揮毫された書があります。宿銭のかたに書いたのではなく、高橋夫妻に請われたものです。

 出会いの達人、里みちこさんが活活寄席に来られるまで8ヶ月ばかり、もうしばらくお待ちください。里さんもまた皆さんとの出会う時の訪れを待たれています。

 

(追記)

 里みちこさんの詩はがきをご希望の方にはお送りします。

 「美しいものがあれば」「シートベルト」「しあわせカルタ」「勇気の門」「やさしいこころ」「ケンの旅」「潮騒」「終着駅」

 題名でピンと来られたものをコメント欄かお問い合わせフォームにてお知らせください。

(宮森健次)